アナザーラウンド(泥酔先生)

アナザーラウンドを観た。

 

公開時に少し話題になったので、気になっていた。

内容は

4人の男性教師たちは、それぞれに生活に行き詰っていた。それは家族生活であったり、仕事である教師として生徒指導や授業であったり。それを何とかするために飲酒をして血中アルコール濃度を常に0.05 %(後半ではさらに濃度を上げる)に保つようにする。そうしたら、、、

という話だ。

要は中年の危機をアルコールで解決しようというのだ。

 

基本的にコメディ路線であり、そう思って観れば悪くはない。

しかし、そう割り切って見ることはできない。

まず、主人公のマーティンは結局妻アニカ(と子供)を失ってしまっている。最後に復縁をほのめかしているが、ラストまでずっと別れたままである。この夫婦問題は結局シラフの時と酩酊状態の時の差で破局したようなものだ。もちろん、酒を飲まなければ一緒に暮らしているものの事実上破綻している状態ではあったのだろうが、、、どちらがよかったのか。また、トミーが応援していると励まし、またマーティンとアニカのメールのやりとりでも「トミーもぼくらのことを応援している」「私もそう思う」とあったが、トミーと二人の関係も分からない。4人組のうち、他の2人だってマーティン夫婦のことは知っているし、応援をしていたはずだ。

また、そのトミーが亡くなってしまった。自殺で。トミーは家族もなく、職員会議に泥酔状態で参加してしまい、おそらくそれがトリガーになったようだった。

その他にも、結局、酒では解決してない(むしろ悪化している)ことがあったり、そうかと思うと留年している生徒のセバスチャンの口頭試問は飲酒で順調にいったりしている。

ともかく、後半は(常時)飲酒はダメだなとストーリー的にもなってきていたのに、最後は卒業生とともに大量に飲酒して海に飛び込んで終了、スタッフロールへ、、、。トミーが死んだのは海に飛び込んだはずなのに、、、。

そして、いちばん納得がいかないのが、授業ができないから飲酒して臨むというもの。学校のありかたが日本とデンマークでは違いすぎるので単純比較はできないが、これはだいぶ疑問だ。しかも、主人公のマーティンは若い頃研究者を目指していたとか、4人はこの飲酒行動を、一応、論文にしようとしていた。事実上この論文の章が作品のパートとなっている。

結局、飲酒によって彼らの中年の危機は解決しなかった。トミーに至っては、文字通り、命を捨てている。

戦争こそ関わっていないが、

ハッピーエンドではない(ある意味ではハッピーエンドなのか?)

体制や社会常識に逆らっている

などの点でアメリカン・ニューシネマ的ともいえるが、どうも難しい。

また、デンマークが高校生の飲酒が普通であることや、アニカの台詞にあった「どうせこの国の男はのんだくればかり」などデンマークのことが気になることは気になる。

 

結局コメディとして笑うには後半が重すぎるのだ。ブラックジョークにすらなっていない。