映画「ドライブ・トゥ・ヘル」と女の子のアクション映画

2019年のブルガリア映画「ドライブ・トゥ・ヘル(DRIVE to HELL)」を観た。

内容よりもまず、2019年の作品が2022年の今頃準新作レンタルってどうなんだ。

上映や配信状況が分からないが、日本公開は相変わらず遅い。

 

ジャケットや煽り文句からとてもメチャクチャで爽快なものを想像していた。

なにせジャケットは、炎上する車をバックに銃をかかげる女(ボーリャ)とサングラスをつけホットパンツにTシャツを右手でまくり上げ左手に銃を持つセクシーな女(ミラ)で、煽り文句が「すべてが快感!!」だ。

タイトルも頭が悪い。DRIVE to HELL(地獄へのドライブ)だ。

 

実際に観てみると、確かに動機というか、物語の発端は猛烈に頭が悪い。

が、現実にもありそうというか、映画や小説としては洋の東西を問わず何度も使われてきたものだ。

要するに、女(ボーリャ)が恋人(と思っているが妻子持ちの男。実は男からしたら遊びの浮気)に噓のような(嘘の)理由(姪が心臓の病気で来週にも手術しないと助からない)で金を貸してくれと言われ、それを工面しようとして、、、

というやつ。

最初、ボーリャとミラが友人と気づかなかった。てっきり恋は盲目状態の母と堅実にしかしつまらない生活をおくる娘かと思った。西洋人の顔は分からない。

が、ともかく、そうして物語は展開していく。

爽快感は少ししかなかったので、あるいはこれはタイトル通り地獄へいく、救いのないバッドエンドへの鬱展開かと思ったが、そうでもない。

不思議なことにだんだんとグッとくるというか、何かこう、感動ではないが胸にくるというか、脳裏に何かがよぎるというか、主人公たちに気持ちを寄せてしまう。

空港で逮捕されるとき、ボーリャが撃たれた(という仮定のシーン)はさすがに驚き、泣きそうになった。違っていて本当によかった。

最後は何となく爽やか風におわったが、ミラはともかく、ボーリャはどうなんだろう。

ボーリャもハッピーエンドにしてあげてもよかったのではないか。

自業自得といえばそれまでだし、発端もボーリャのせいでミラはこうなったんだからといえばそうだろう。

また、ダメ男や社会の制約のない自由な人生を手に入れたといえばそうだが(実際、マーティンを一度逃がした駅前のシーンでは、何かが起きるのを待っている人生から行動して何かを手に入れる人生に変わったのよ、みたいな発言をしている(うしおととらの外伝で婆さんに化けたとらが若い頃の木曾義仲の愛人、巴に言ったセリフみたいだなと思った))、しかしそれは結局、社会からはじき出されただけとも言える。何となく途中で電話番号を交換したトラックドライバーに連絡するような含みがあったが、なんか微妙にさみしい。

ミラの方はマーティンがいて、本を出版するという夢も叶えているだけに、その対比で余計にさみしくなる。なんなら刑事と結ばれてもよかった気がする。刑事もカーチェイスの場面で惚れそうだと言っていたし。

 

物語の最初の方でテルマ&ルイーズみたいというセリフがあったが、確かにテルマ&ルイーズのようではある。

 

個人的には140分は長いとは思うが、つまらなくはなかった。名作とはいえないまでも面白く観れた。また、個人的にブルガリア語が若干わかったように錯覚でき、キリル文字をつかっているから、作中の道路標識や看板などが読めたのも嬉しかった。

ただし、これをコメディと思って観たらつらかったと思う。実際感想サイトにそういう人が何人かいた。自分がアメリカンレポーターを観た時と同じように感じるだろう。

コメディというには笑える要素が少ない気がする。ロードムービー、ややコメディあり悲しい恋と哀しい友情ありといったところか。

 

ひと月ほど前にみた中国映画「デンジャラス・ベイビーズ」の感想を書いていなかった。こちらはストーリーは、まあ、まじめに考えるだけ野暮だった。

美人さんたちがコスプレまでいかないくらいのかわいい衣装で、アクションをするのを楽しむ作品。

そう割り切ればとても楽しい映画。女の子のアクションが好きなら間違いなく何度か見たくなる。

ストーリーが凝ってないから、おかしなストーリーでも気にせずに済む。その意味で邦画の「血まみれスケバンチェーンソー」なんかは負けてしまう。

あれは中途半端にストーリーがあるのがもったいなかった。