このあいだ近所のBOOK OFFに「裏世界ピクニック」が全巻(ハヤカワ文庫で2022年9月3日現在7巻まで発行)売られていた。
しかも1冊110円。
最初は迷ったが、7巻全部揃っているなら、と買ってきた。
早川書房がいつぐらいからか、日本SFに力をいれてるなと思ったら何というか妙な感じがした。
何というかオタクに媚びているように感じた。
「南極点のピアピア動画」「天体の回転について」「最後にして最初のアイドル」あたりのジャケットを見たときの話だ。
もともとSFはオタクと相性がいいではあるが、いわゆる萌えには(やせ我慢か見栄かもしれないが)そっぽを向いていた印象だったが、ついにこうなったかと驚いた記憶がある。
そもそも当時はSFに限らず、文庫のジャケットがラノベ仕様というか、萌えに侵食されてきた頃だった気がする。
ハヤカワ文庫に話を戻すと、
その後、ジャケットに少女が描かれていることは増えたが、それまでの萌え(男性向けの美少女)ではなく、百合に傾いてきたことに新鮮な驚きを感じたことを覚えている。
「アステリズムに花束を 百合SFアンソロジー」などはタイトルに百合と銘打っているし。
その流れの中でスマッシュヒットして、アニメ化までしたのが「裏世界ピクニック」だった。
前述のどれも気になりながら、SFに不得手なことや他に積んでる本があることなどからひとつも読んだことがないまま、ここまで来た。
そうこうしているうちに、新刊に流されて書店の店頭から消えたり、巻数が増えて手を出すハードルが上がったりして、とうとう読んでこなかった。
ということで、「裏世界ピクニック」の1巻、ふたりの怪異探検ファイルを読んだ。
面白い。ネットの怪談と異世界(異世界もの自体がネットの怪談にも少なくない)を組み合わせたもので、怪談話が好きな自分にはとても面白く読めた。
文庫の最後に、引用というか、物語の骨格に使われた怪談の出典(書籍やネット怪談)が載っていることもよかった。
ちなみに、1巻では
くねくね、異世界に行く方法、時空のおっさん、八尺様、こぶづか、きさらぎ駅、猿夢、チャイムが鳴った
がその出典解題に記載されている。
このネット怪談などを下敷きというか本歌取りというか、換骨奪胎(これは悪口か?)した作品を読んで、あるいは、今昔物語などが好きな人が芥川龍之介の王朝ものを読んだ感想もこういうものだったのかと思った。
さっそく、2巻に進むとしよう。