カラスの親指

観て感想を書けと、宿題を出された。

課題は3つ。

今日はその1つ、カラスの親指をみた。

 

ストーリーは、闇金に生活を壊された主人公が詐欺師となって8年がたっていた。ひょんなことから5人で共同生活をするようになる。そこへ再び闇金の魔手が。このまま逃げても仕方ないと5人で闇金を詐欺にかけようとする。
2時間半と長めであるが、ストーリーが面白いので一気に観ることができた。
ご都合主義な点が多少気になるが、この手のコン・ゲームものでそんなことをいっても始まらない。
特別、難しいことは考えずに娯楽映画として楽しめた。と書きたいところだが、一つだけ評価が難しいところがある。
もちろんラストについてだ。
ラストといっても20分ほどある。闇金を詐欺にかけ仲間もみんな解散し、その後を描いたところだ。端的にいって蛇足だったように思えた。
このラストには2つの意味がある。1つ目はそのままみた通り、その後の主人公たちの生活を見せるエピローグとして。2つ目は作品全体の種明かしとしてである。
問題は後者の方である。
まず観客は物語が進むにつれて、真のキーパーソンはテツであることに気づくだろう。マクガフィンが多いうえに、どれもいかにも意味がありそうであった。念のためこの文章を書きながらインターネットで調べたら、「17のチェックポイント」云々とある。そしてラスト・シーンをみることになる。
結局それはストーリーを楽しむというより、ただの答え合わせである。
こういう見え見えの伏線だらけの作品はデヴィッド・リンチ監督の作品や12モンキーズなど他にも存在するが、管見の範囲では答え合わせなどしない。観客の解釈に任せている。答え合わせなど野暮なだけだ。
更に問題なのは、パッケージやチラシに「衝撃のラストには、衝撃のウラがある。」とあることだ。おそらく、衝撃のウラというのがラスト・シーンなのであろう。先述の通り、真のキーパーソンはテツであることに気づいてしまえば、細かい点はともかくラストの内容は予想の範囲内であった。最初はまさかこれが衝撃のウラではなかろう、さては衝撃のウラを見逃したのかと不安になって、ラストだけ見直したがやはり衝撃のウラには何の衝撃もなく予想通りであった。
そして、そのラストで急に人情ドラマのような雰囲気をかもしだしてきた点も気になる。
先に「特別、難しいことは考えずに娯楽映画として楽しめた。と言いたいところだが」と書いたが、このラストの人情ドラマさえなければ内容・長さともに完璧だったのに。人生訓をいれたいのかなんなのかわからないが、これはもう間違いなく蛇足であろう。この作品に人情話は、詐欺師になったきっかけ以外には不要であった。
また、個人的にはお笑い芸人を俳優に使うのはあまり好きではない。これは好みの問題であるが。
結局、ラストさえ何とかなればものすごく満足度の高い作品になったと思う。せめてパッケージで大げさにあおることをしなければ、過度な期待もしないはずなのでもう少しよかったかも。もったいない。
ラストさえ目をつぶれば傑作。後味はけっして悪くはない。
原作は読んでいないので、原作との比較は行わない。
闇金に攻撃(詐欺)をしようと決めた後、貫太郎が家を見張っている時のTシャツが「TRICK」という文字であったのには笑ってしまった。
また、人情ものとして見るならば、タイトルの親指というのが、チャイの生姜のように効いている。