パーマンはでてきません

映画「バードマン あるいは(無知がもたらす奇跡)」をみた。

期待して観たぶん、思ったほどではなかったと感じる作品の典型であろう。

他の人の感想でも、どうやら高評価と低評価が入り混じっている模様。当然だろう。

 

ストーリーはごくシンプルだ。

かつて子供のヒーロー、バードマンを演じ一世を風靡した役者がいる。現在は過去の栄光で知名度も人気もあるが、それしかない状況。俳優としては失敗しているので金銭的にも苦しい。また、いくら知名度や人気があっても、あくまで子供用。本人としては芸術的な点を評価してほしい。

その役者が脚本も構成も主演も主宰も自身で行ない、ブロードウェーですべてをかけた舞台を行なう。

 

作中、過去の自分としてバードマンがでてくる。これは過去の自分であり同時にイエスを誘惑する悪魔でもある。

この作品が、評価されない理由として考えられることを列挙する。

宣伝文句にブラックコメディーとあること。作品の全体(登場人物の現状など)はブラックコメディーと言えなくもないが、作中の登場人物たちは彼らの舞台公演という現実の中にいるため、いわゆるコメディー映画とはいえない。

また予告編の動画が想起させることと、実際の映画の中で、その場面の使われ方が違うということもある。過去の自分(自信)を取り戻すシーンかと思いきや、ただ単に困っている場面だったり。

そして、最終的に望んでいた名声を得るのであるが、それが副題の、無知がもたらす奇跡である。奇跡ではあるが、いかにも納得しがたい。それこそ絶賛した批評家(前夜に主人公に強い憎しみをぶつけている)の嫌味にすら思える。

なによりも、前評判が高くしかも、作中の主人公が望んだように、芸術性の高い作品だと思って見る人が多かったであろうことだ。

 

実際に以上のような、変な期待をしなければ、65点はある映画だとは思う。

演出も非凡なのだが 、なにかこう、でこの映画はどういう映画なのかがいまいちわからないところが残念であった。リンチ監督のように不安が現実を侵食して狂っているようにも行けたであろうし、あるいは主人公の内面で過去の栄光と現状の認知が止揚していくエンディングにもいけたであろう。そういう様々な、であろうを廃してこうなったのが惜しいといえば惜しい作品であった。