蘭陵王総括

蘭陵王を観終わった。
史書に書いてあることの回収を急いだ感はある。
宇文邕(北周武帝)の仏教弾圧、斛律光の処刑、北周華北統一など。
正直、史実通りにする必要があったのか疑問に思うものもある。
それは、史実と違うことが多くあるからだ。以下それらを列挙するが、このように史実と異なる設定が多いのに、例えば、斛律光の処刑などはなぜ史実に合わせたのかわからない。

以下史実と異なること。

そもそも蘭陵王が死なない。

尉遲迥は宇文護に殺されない。

北周北斉に侵攻したとき、後主は死んでいない。
安徳王が皇帝に擁立されていない。
段韶が後主、というか馮皇后(鄭児)に殺される。
馮小憐は後主の皇后ではない。
などなど言い出せばきりがない。
しかし、ドラマとしてはのめりこめるつくりであった。
特に最後の2話は胸に来るものがあった。
楊雪舞(鄭妃)も馮皇后(鄭児)も後主(高緯)に射殺されてしまう。すぐに死ぬわけではない。その二人の死ぬ場面が用意されている。
高緯が、瀕死の馮皇后の胸元から曼陀羅華の毒薬を取り出し、鄭児に想いを告白し、毒を飲み血を吐いて死ぬ。そのすぐ後をやはり、終生寄り添いたかったのは本当の気持ちと打ち明けつつ高緯を抱くように鄭児も死ぬ。
楊雪舞は、蘭陵王に抱かれつつ、息子平安のことを頼み、蘭陵王に女媧廟の誓いを忘れ再婚するように勧める。その際は雪舞よりもきれいでなく、賢くない女性にして欲しいという。それは蘭陵王に雪舞のことを忘れてほしくないため。
あわせて、蘭陵王がこの戦い(高緯と鄭児の殺害)に行くときに、平安が成長して父の顔を教えてあげるために似顔絵を残そうとする。それに対して雪舞が似顔絵などいらないと、父(蘭陵王)の眉目、鼻筋、口の形容、そして世界一の美男子であることを説明する場面もある。
これらの場面の切々として胸に訴えること甚だしい。
また、宇文邕が北斉を滅ぼし、北斉の宮城に入ったとき、死んだ雪舞を想い泣く場面。宇文神挙を通じて、文武百官に後ろを向かせ、一言も口をきかぬように命令する。そして膝をつき、土下座のような格好で号泣する宇文邕。そして自身も後ろを向いて沈痛な表情で黙る宇文神挙。

そうそう紅萼が、馮皇后(鄭児)の身代わりになって殺されてしまう場面があった。その直後に宦官四喜も後主に殺される。

さらっとしているが、二人とも好きな人物だったので悲しかった。
登場人物については、全編通じて宇文邕と、宇文邕に犬のように従う宇文神挙は好きだ。役者の顔立ち、役の立ち位置、セリフ、どれもが好感をもてる。次点は韓暁冬、小翆。そして安徳王、王家令。それから楊林氏と皇太后の婆さんコンビ。特に楊林氏の雪舞に対する愛情の深さと照れ隠しと責任感からの厳しい言動と態度はたまらなく好きだ。紅萼と四喜が出るとどんな暗い場面も少しだけ明るくコミカルになった。彼女らの死ぬ場面以外は。尉遲迥と阿史那皇后も素敵でいい役だった。
最後は華北を統一した宇文邕が朝議を解散してすぐに(祖珽の毒薬によって)死ぬ。そしてナレーションベースでその後北周楊堅の隋に代わり、隋が天下統一することを説明。安徳王はその後蘭陵王と会っていないこと、蘭陵王が雪舞の墓前に佇んでいるところに平安が来る。
最後に20世紀に高長恭の孫である高元簡が亡母である趙敬の供養のために龍門石窟地蔵菩薩像と観音像を納めたという記録がなされていることが発見されたことをナレーション。
ナレーションで終わるせいか、観後感は思いのほかあっさりしている。
DVDのつくりに対する不満はある。特に字幕について。しかし、ドラマ自体に魅力があるためそこまで気にならない。
なによりDVD23枚、4月26日から見始めて5月24日に見終えた。約1か月、夢中で見ていた。
北斉書や北史を、気になる個所だけではあるが、読むきっかけにもなった。
作品世界と別れを告げるのがさびしくある。南北朝の勉強をして偲ぶことにするか。

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