久々にいいホラーを観た

キョンシー」を観た。
キョンシー・リブート、原題「リゴル・モルティス」
面白かった。が、万人に薦められるかというと難しい。ホラー映画全般がそうだが。
ストーリーは、落ちぶれた元俳優がうらぶれたアパートに引っ越してくるところから始まる。
あらすじやキョンシー(特に霊幻道士シリーズ)のオマージュ部分の解説は多くのブログで既にされている。ここではしない。というよりできない。一応霊幻道士シリーズもみているはずだが、余り記憶に残っていないから。幽幻道士の方はバリバリだが。

ただし、冒頭(と中盤にもう一回)かかる死人の姫の婿探し道中にかかる曲はうれしかった。原曲のほうがテンポがよいがゆっくりかかるのも悪くない。
全体の雰囲気は終始暗い。コメディ要素は全くない。また、演出が呪怨着信アリ、リングなど日本のホラー(が中興したとき)に似ていると思っていたら、清水崇がプロデューサーとしてスタッフに加わっていた。
恐いが、よくあるいきなり大きな音で登場する、いわゆるびっくりさせるような演出はない。素晴らしい。純粋に恐かった。
最後のオチは賛否両論あるだろう。しかしこういうのも悪くない。若干マルホランド・ドライブを想起した。
ホラーの中でも特にキョンシー映画にあった、ダメな行為の負の連鎖が健在でよかった。
ここでいうダメな行為には数パターンあるが、とにかく、そんなことをしたらキョンシーや悪霊が活動しちゃう、更にこんなことしたらみんな殺されちゃう、みたいにその行為をすることで事態がどんどん悪い方へ転がっていくことである。
この作品ではムイ(老夫婦の妻)がトン(老夫婦の夫)を蘇らせようとして、ついにパク(フォンの子供)をキョンシーとなったトンに食わせるあたりからがもう負のジェットコースター。

パクがムイの部屋でトイレを借りようとして、ムイにトンのキョンシーのいるトイレに案内されるシーン。トンのキョンシーをみて、おそらくソレに殺されることを悟ったパクが泣き出す。ムイは毒を食らわば皿までとパクをトイレに押し込み、アコーディオンカーテンを閉める。その後、パクの髪と脳みそだけが血まみれのトイレで映るシーン。ホラーとして、あくまでホラー映画の演出として素晴らしい。

その後ムイはどうなったのであろう。血まみれの部屋を見る限り、すでにムイもキョンシーに殺されていそうだが。最後の戦いのときにもでてくるし。しかもその時はキョンシーよろしく灰になっちゃうし。ムイについての考察も面白そうだ。
救いのない暗いホラーとしても、昔のキョンシー映画のオマージュとしても良作。

音声は広東語と日本語があるのに、字幕は日本語だけであった。欲をいえば、広東語字幕も欲しかった。