要出典

有名なのに出典がわからず事実かどうかわからない話がある。
まるで幽霊だ。

 

これなどは特に有名であろうか。
中国では、君子は心を労し小人は身体を労すという発想というか行動指針というかがあり、肉体労働をする者は社会的に身分や立場が低い。
明代か清代の話。中国の大官がイギリスの大使館(的なところ)に用事があって訪ねた。ちょうどそのとき、在中国高官(当時中国という国はないが便宜上こう書く)が自ら館員たちとテニスをして楽しんでいた。それを目撃した中国の大官は、このような労働(テニスのこと)を行なうような身分の低い者に、(いくら用事があるとはいえ大官自身が)会うことはないな、と帰ってしまった。
この話はいくつかのバージョンがある。
たとえば、イギリスの高官にテニスを勧められて、中国の大官は「面白そうですから、さっそく下男にやらせましょう」と言ったとか。
中国の大官がイギリスの高官に「このような労働は身分の低い者にさせないと、あなたの高官としての価値もさがりますよ」と忠告したとか。

イギリスの高官がしていたのはテニスではなく、模様替えであったりする。
いずれにしても典拠が知れない。

 

しかし、この話には一片の真実がある。それは君子云々はともかくとして、中国人あるいは中国系の親が子供に勉強させるとき、
「勉強しないと肉体労働しか仕事はないぞ」
と脅すのである。
やはり身体を労するのは社会的に身分が低いのだ。
もちろん、現代でスポーツを肉体労働とはいわないだろうが。